古屋将太は、おひさまエネルギーファンド株式会社の共同
代表取締役、飯田哲也が所長を務める環境エネルギー政策
研究所(ISEP)のフェローで、現在デンマーク・オールボー
大学大学院博士課程に在籍し、北欧および日本の地域社会の
自然エネルギーへの取り組みを社会的な視点から研究して
います。
古屋将太の「シノドスジャーナル」連載記事をお届けして
います。今回は、連載第4回です。
以下転載:
<イントロ>
これまで自然エネルギー政策・ビジネス・ファイナンスという
3つの領域について、海外の事例も交えつつ日本の状況を概観
してしきました。従来の大規模集中型エネルギー事業ではこの
3つの領域をカバーすればそれなりにエネルギー事業は成り立っ
てきました。しかし、基本的に小規模分散型である自然エネル
ギーの普及を考える際には、これらの3つに加えて地域社会の
あり方そのものにかかわる「コミュニティ」という領域につい
ての理解を深める必要があります。
今回は 世界で成功した事例としてもっとも参照されるデンマー
ク・サムソ島の事例と、日本国内で成功した事例としてもっと
も参照される長野県飯田市の事例から、自 然エネルギーコミュ
ニティの形成に向けた手がかりを探りたいと思います。
<デンマーク・サムソ島の100%自然エネルギーへの挑戦>
デンマークのほぼ中心に位置するサムソ島(Samso)は、人口
約4,000人、面積約114平方km、農業と畜産業を中心とする小さ
な島で、特産品のジャガイモとチーズが有名です。100%自然エ
ネルギー地域の世界的な代表事例として参照されるこの島は、
現在、電力の100%以上、熱需要の70%以上を自然エネルギーに
よって賄い、輸送燃料については洋上風力発電によるカーボン
オフセットをおこなっています。
具体的には、島民がオーナーシップをもつ風力発電(陸上1MW
×11基、洋上2.3MW×10基)や麦わらボイラーによ
る地域熱供給、地上設置型の太陽熱温水器などが導入されていま
す(詳細はこちらを参照)。
サムソ島で自然エネルギーへの取り組みがはじまったきっかけは、
1997年に国が実施した地域自然エネルギーのコンペティションへ
の参加でした。すでに1985年には原発の導入をやめていたデンマ
ークは世界的にも早くから風力発電をはじめとする代替エネルギ
ーへの試行錯誤をおこなってきましたが、政府は1990年代の環境
政治・政策の深化のなかで地域のモデルとなる取り組みを生み出
すべく、島における自然エネルギー導入計画を公募しました。
その際に、サムソ島は包括的な自然エネルギー導入計画を作成し、
モデル地域として取り組みをはじめることとなりました。
サムソ島の取り組みが世界的に参照される理由はいくつかあるの
ですが、なかでも注目すべきは、島民の幅広い参加のもと、民主
的な意思決定のプロセスを経て100%自然エネルギーを実現させ
た点にあります。取り組みの中心的主体となった「サムソ環境エ
ネルギー事務所」は、「地域の人々がプロセスに参加し、取り組
みの趣旨や内容を理解した上で進めることがもっとも重要である」
との認識のもと、風力発電や地域熱供給のプロジェクト計画立案
の早い段階からパブリックミーティングを複数回開き、課題の洗
い出しと対応策を住民と共有しました。
具体的には、風力発電の立地選定に際して、自然保護区域を避け
るゾーニングを行なったり、候補地への設置イメージをCGで作成
して景観へのインパクトを想定するなどして、住民とのコミュニ
ケーションを重ね、時間をかけて「地域の人々にとって望ましい
自然エネルギーのあり方」を探っていきました。もちろん前回述
べた「オーナーシップ」もその一環として組み込まれており、島
内の自然エネルギー設備は島民によって所有され、自然エネルギ
ーの経済的メリットは島民に還元されています。
<長野県飯田市・おひさま進歩エネルギーの挑戦>
飯田市は長野県の南信州地域に位置する人口約10万5,000人、
面積約660平方km、りんごの生産と人形劇などの伝統芸能を中心
とする地域です。飯田市は、「日本の環境首都コンテスト」の人
口規模10万人以上30万人以下の部門で、2007年以降4年連続で第
1位を受賞するなど、環境への総合的な取り組みという面でも実績
があり、各地からの注目を集めています。
そして、飯田市内のさまざまな環境イニシアティブのなかでも、自
然エネルギー関連でもっとも参照されている取り組みが、地域エネ
ルギー会社「おひさま進歩エネルギー株式会社」が取り組んできた
「市民出資による太陽光発電・省エネルギー事業」です。
〜〜〜 中略 〜〜〜
<自然エネルギーコミュニティ形成のカギ>
3.11震災と福島原発事故以降、多くの人々が自らの地域社会を支
えるエネルギーのあり方について真剣に考え、具体的にどうやっ
て地域で自然エネルギーに取り組めばいいのか模索をはじめてい
ます。しかし、これまで中央集権的に大規模事業として行なわれ
てきたものを、地域で小規模分散型に組み替えていく作業にはさ
まざまな課題が立ちはだかることが予想されます。また、地域に
よって条件は異なるため、それぞれの地域でそれぞれの課題に対
処しなければなりません。では、これまでわたしたちが経験した
ことのないさまざまな課題にどのように対処すればいいのでしょ
うか。
結論からいえば、いかにして地域で取り組みの核となる民間組織
を形成するかがカギとなります。自然エネルギーへの取り組みを
知識生産のプロセスとしてとらえた場合、これまで経験したこと
のない課題に挑戦するので、そこでは試行錯誤がおこなわれ、
新しい知識(ビジネスモデル、ファイナンスモデル、その地域や
プロジェクトに固有のリスクへの対処法など)が生み出されます。
そして、その知識は経験にもとづくものであるため、当事者に蓄
積され、取り組みの次の段階ではその経験的知識を前提として、
新たな課題に挑戦し、さらに新しい知識を生み出すというステッ
プを繰り返すことになります。
このような視点で考えれば、それぞれの地域で知識を生み出し、
積み上げていく「人」が継続的に取り組みにかかわる体制をつく
る必要があることがわかります。その意味で、行政の担当者は2
〜3年で異動して毎回ゼロから知識を積み上げていかなければな
らないため、取り組みの核にはならない方が賢明であると私は
考えます。基本的には民間企業やNPOが創意工夫をもってイニシ
アティブを発揮し、行政はそのサポートに徹することが望ましい
といえます。
次回はこうした地域の自然エネルギーコミュニティがどのように
ネットワークを形成し、相互に経験と知識を共有しているのかに
ついてみていきたいと思います。
〜〜〜以下、本文参照〜〜〜
【サブタイトル】
◎イントロ
◎デンマーク・サムソ島の100%自然エネルギーへの挑戦
◎長野県飯田市・おひさま進歩エネルギーの挑戦
◎チェンジ・エージェント(変革の担い手)
◎自然エネルギーコミュニティ形成のカギ
◎本日の一冊:北欧のエネルギーデモクラシー
著者:飯田 哲也 /新評論
□全文は、シノドスジャーナルをご欄ください。